不動産を売却した後、買主から「雨漏りしている」「シロアリの被害がある」と連絡が来る。想像したくない事態ですが、実際に起こり得ます。このとき売主が負うのが契約不適合責任です。
2020年の民法改正で、それまでの「瑕疵担保責任」から契約不適合責任へと制度が変わり、売主の責任は以前より重くなりました。この記事では、何が責任の対象になるのか、買主にどんな権利があるのか、そして売主としてどう備えればよいのかを解説します。
1. 契約不適合責任とは何か
ひとことで言えば、「引き渡したものが契約の内容に合っていなかった場合に、売主が負う責任」です。
改正前の瑕疵担保責任は「隠れた瑕疵」、つまり買主が知り得なかった欠陥が対象でした。しかし現在は「契約の内容に適合しているか」が基準になります。
この違いは実務上とても大きいものです。契約書や付帯設備表に書かれた内容と実物が違えば、それだけで責任を問われ得ます。逆に言えば、契約書にきちんと書いてあれば責任を負わないということでもあります。
2. 買主が主張できる4つの権利
契約不適合があった場合、買主は次の請求ができます。
- 追完請求/修補や不足分の引き渡しを求める。「雨漏りを直してください」という請求です
- 代金減額請求/修補されない場合に、その分の代金の返還を求める
- 損害賠償請求/被った損害の賠償を求める
- 契約の解除/目的を達成できないほど重大な場合、契約そのものを解除する
改正前と比べて買主の選択肢が明確に増えており、修補請求が正面から認められた点が特に重要です。売却代金を使ってしまった後に数百万円の修補費用を求められる、という事態も起こり得ます。
3. 何が「不適合」になるのか
典型的なものは4つに分類されます。
物理的なもの
雨漏り、シロアリ被害、給排水管の詰まりや漏水、建物の傾き、基礎のひび割れなど。中古住宅で最も争いになりやすい部分です。
法律的なもの
建ぺい率・容積率オーバー、接道義務違反による再建築不可、越境、都市計画による制限など。「建て替えられると思って買ったのに建てられない」という類のトラブルです。
環境的なもの
近隣の騒音・異臭、日照や眺望を妨げる建築計画、地中埋設物など。
心理的なもの
過去に自殺や事件があったなど、買主が心理的な抵抗を感じる事情です。いわゆる告知事項にあたります。
4. 売主として備える3つの方法
(1) 知っていることは、すべて書面で伝える
最も基本的で、最も効果的な対策です。不具合を隠して売るのは、絶対に避けてください。
「言うと値段が下がるのでは」と考える方がいますが、逆です。先に開示して価格に反映させたほうが、結果的に安全で、手元に残る金額も安定します。後から発覚した場合、値引き幅は当初の想定をはるかに超えることが多いためです。
売買では物件状況等報告書(告知書)と付帯設備表を作成します。ここに「雨漏りあり」「給湯器の調子が悪い」と正直に記載し、買主が了承したうえで契約すれば、その部分について後から責任を問われることは原則ありません。
(2) 特約で責任を限定する
売主が個人の場合、契約不適合責任を負う期間を「引渡しから3か月」などに限定したり、免責としたりする特約を設けることが可能です。築古住宅の売買では、こうした特約を付けるのが一般的です。
ただし、知っていながら告げなかった事実については、特約があっても免責されません。「言わなければ特約で守られる」という考えは通用しないとお考えください。
なお、不動産会社が売主となる場合は宅地建物取引業法により、引渡しから2年以上とする特約以外は認められないなど、買主保護のルールが適用されます。
(3) 事前にインスペクション(建物状況調査)を受ける
専門家に建物の状態を調査してもらう方法です。費用はかかりますが、「調査済みである」ことが買主の安心材料になり、売却がスムーズに進むという効果があります。何より、自分でも気づいていなかった不具合を売却前に把握できるのが大きな利点です。
5. トラブルを完全に避けたい場合
それでも「売った後に何か言われるのが不安だ」という方は少なくありません。特に相続した実家のように、自分が住んでいなかった家は、どこにどんな不具合があるのか分からないのが実情です。この不安は当然のものです。
この場合の最も確実な選択肢が不動産会社による直接買取です。当社が買主となる取引では、契約不適合責任を免責とすることが可能です。プロが物件の状態を理解したうえで買い取るため、引き渡し後に責任を追及されることがありません。
仲介より価格は下がりますが、「売却後に数百万円を請求されるかもしれない」というリスクを完全に消せることには、金額に換算しきれない価値があります。特に、高齢のご所有者や、遠方にお住まいで対応が難しい方には、この安心感を重視される方が多くいらっしゃいます。
まとめ
契約不適合責任は、「契約書に書かれた内容と実物が違う」ことに対する売主の責任です。買主は修補・減額・賠償・解除を求めることができます。
売主としての備えは3つ。知っていることを書面ですべて伝える、特約で責任の範囲と期間を限定する、必要に応じてインスペクションを受ける。そして、リスクを完全に避けたい場合は、契約不適合責任を免責にできる買取という選択肢があります。
前橋不動産では、告知書の作成から特約の設計まで丁寧にサポートし、売却後に不安が残らない取引を心がけています。「この不具合は伝えるべきか」という段階のご相談も歓迎です。まずはお気軽にお問い合わせください。

